ここでは、当店が扱う米処の民話をご紹介します。
内容からどんな場所なのかということや、雰囲気を感じてください。
神話の里 仁多
さて、仁多米が【西の横綱】や【東の魚沼コシヒカリ・西の仁多米】などと言われるようになったのはまだ最近のお話ですが、この仁多という米処はとても歴史の深い土地です。それこそ風土記の時代から。
仁多と號なづくる故以は、所造天下大神大穴持命アメノシタ ツクラシシ オオカミ オホナモチノミコト、詔りたまひしく、
此の國は大きくも非あらず、小さくも非ず、川上は、木の穂刺し加布(交
う)。川下は、河志婆布かわしばふ這ひ度れり。是は爾多志枳小國にたしきおぐになり」と詔りたま
ひき。故かれ、仁多と云う。
(加藤義成「出雲国風土記」平成24年6月15日改版17刷,株式会社 報光社,p.83)
上記は出雲風土記の中の仁多に関する一節です。簡単に意味を説明すると、
仁多と名付けられた理由は、所造天下大神大穴持命(あめのしたつくらししおおかみおほなもちのみこと)が「この国は大きくもなく、小さくもなく、川上には木の梢が入りまじっている。川下は川辺にシバが這っている。ここはうるおいがあって、肥えている土地である。」と言ったから、仁多というのだ。
という感じです。ここでいう「シバ」ですが、ホモノ科の植物…つまり今でいうイネ科の植物の事です。風土記の内容を決めるにあたり、条件として決められたものの中で「土地の地味の良否」というものがありました。その良否を決める基準となるのが、イネ科の植物の存在です。実は、古事記や風土記によく登場する「葦」という植物もイネ科(ホモノ科)の植物なんですよ?また、以下のような説明と共に誕生する神も存在します。
【前略】…水辺の葦が芽を吹くように現れ出た神は、生物に命を吹き込む神 ウマシアシカビヒコジであり…【以下略】
(山下直久「ビギナーズクラシックス 古事記=角川書店編」平成年5月15日20版,株式会社 角川学芸出版,p.22)
この神様は生命力を象徴する神様です。「ウマシ」というのは「うまし(美し)国」と同じで「良い、素晴らしい」という意味です。「アシ=葦」で、「カビ」というのは「芽吹く」という意味になるので「葦の芽」ということになるのでしょうか。古事記の中で地上を「【葦】原中国」と言いますが、この「葦」もこの神様に通じるところがあります。生命の象徴・ウマシアシカビヒコヂ⇒葦のように生まれた⇒葦はイネ科の植物というところから、「イネ科の植物が生えているところは生命力のあるところである=いいところ」とされたのかもしれません。あくまで私の勝手な解釈ですが。
直接名前に関係する「爾多志枳(にたしき)」。言ってしまいますが、「うるおいがあって、肥沃である」という意味を示す部分は「爾多」の部分のみで、あとは当て字で何の意味もないんだそうです。ちなみに「にた」とはドロドロしたものを言い、酢味噌和えのことを「ぬた」というのもここに由来するとも言われています。
さいごに、島根県の仁多はかなりお米作りに有利な良い土地だということがわかっていただけましたか?仁多についてこれからもいろいろ調べていきますので気長にお付き合いください。
【所造天下大神大穴持命あめのしたつくらししおおかみおほなもちのみこと】
大国主様と言えばわかりやすいかと思います。出雲国風土記だけでなく、古事記でも活躍する有名な神様ですね。出雲大社の祭神としてご存知の方も多いのではないでしょうか。「所造天下大神大穴持命」というのは別名で、ほかにも多くの別名で登場する神様です。この名前については、一つ一つの字を分けて考えてみると、なるほど納得大国主の別名だということがわかりますね。つまり「天下(いわゆる地上)を創造した凄い神である」という意味を持つ名前です。大げさなくらいすごい名前ですが、これ以上言ったら偉い人に怒られるので割愛します。とにかく凄い神である大国主様が登場する有名な神話は以下の通りですので、興味がある方は是非読んでみて下さい。
・因幡の白兎(素兎)
・国譲り
・八十神の迫害
・根の国訪問
・大国主の妻問い など
個人的に好きなのは下の3つで、簡単に言えば大国主が女性に人気なあまり様々な困難がふりかかるお話です。有名なのは上二つでしょうか?次回はどんな神様が登場するのかお楽しみに。
【URL】
・http://www.jinja.in/single/86120.html
-神社ポータルサイト日本神社 「鳥取神社」「山口神社」閲覧日:2015/04/21 有限会社 白曜社
・http://ci.nii.ac.jp/els/110007184981.pdf?id=ART0009142695&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1429766501&cp=
CiNiiより 國府田 紫「高天原」と「葦原」
【参考文献】
・植垣節也/橋本雅之「風土記を学ぶ人のために」2001年8月10日 第1刷発行,世界思想社
・加藤義成「出雲国風土記」平成24年6月15日,改版17刷,株式会社 報光社
・嘉本安夫「出雲国風土記と神話の元・基」平成24年1月27日,今井出版
・川島芙美子「こども出雲国風土記」2009年5月22日10刷・改訂版,山陰中央新報社
・関和彦「NHK文化セミナー・歴史に学ぶ 出雲国風土記とその世界」,1996年4月1日 第一刷発行,日本放送出版協会
・藤岡大拙「神々と歩く出雲神話」 2010年12月18日,第2刷発行,NPO法人出雲学研究所
・島根県勤労者山岳連盟 平井充「出雲の山々とその周辺の山」2000年8月1日,有限会社 黒潮社
・山下直久「ビギナーズクラシックス 古事記=角川書店編」 平成年5月15日,20版発行,株式会社 角川学芸出版
・Image Forum ザ・出雲研究会「フシギ発見の旅 ガイドブック 出雲國風土記」1995年9月20日,Image Forum ザ・出雲研究会